2021.07.26
お菓子な博物館 第19回 ~ 夏にぴったり 冷たいおやつ<昭和> 編~
目次
梅雨が明け、いよいよ本格的に暑くなってきましたね。
そこで今回は、夏にぴったりな「冷たいおやつ」に関する道具などをご紹介したいと思います。(ただし、昭和です。)
1. ところてん ~漢字で書くと「心太」
出典:写真AC
見た目にも涼しそうな「ところてん」、漢字では「心太」と書きます。
その歴史は古く、奈良時代の文書にも「心太」という名は出てくるそうです。「こころぶと」や「こころてい」から転じて、いつの間にか「ところてん」と呼ばれるようになったとか。(諸説あります。)
関東では酢醤油で食べるのが一般的ですが、これは地方によって違うそうです。
筆者は生粋の関西人なので、そもそも、ところてんを食べる機会がほぼないのですが、葛切り同様、黒蜜で食べるものだと思っていました。
ところで、「ところてん」と「寒天」の違いをご存じですか?
実はどちらも同じ、天草(てんぐさ)という海藻から作られます。この天草を煮て抽出した寒天液を冷やし固め、できあがるのが「ところてん」です。そして、それを凍らせ、乾燥させたものが「寒天」なのだそうです。
①
昭和初期の海草天草問屋の名前が入った、ところてん、みつ豆のポスターです。
ポスターの右上には“天草(てんぐさ)は海から採ります。寒天は天草から製します。寒天は一名ところてんと申します。寒天はみつ豆の原料に用います。”と説明が書かれていると共に、背景では海辺で天草を採取している様子を描いています。
ポスターの右下にあるのは「試験検査書」です。
①-2
寒天に有害性の金属を含んでいないとして、昭和2年(1927)に東京市衛生試験所の検査済であることを明記しています。
さすがは “衛生” ところてん、みつ豆と称するだけあって、品質のよさをアピールしているようです。
②
そんな、ところてんを押し出す道具がこれ。「天突き(てんつき)」と呼ばれるものです。(長さは約45cm)
筒状になっており、ところてんを入れ、後ろから押し出すと、網目を通って麺状になって出てきます。
余り見かける機会はありませんが、ところてんには欠かせない道具です。
2. かき氷 ~こんな道具で削っていました‼
出典:写真AC
夏といえば、やっぱり食べたい「かき氷」。最近ではかき氷専門店ができるほど人気も高く、進化系かき氷など話題も豊富ですね。
③
これぞ、レトロ‼な昭和時代の手回し式のかき氷機です。
暑い中、頭にタオルを巻いたおじさんが豪快に氷をガリガリと削っている光景が目に浮かびます。(あくまで勝手な昭和のイメージです。)
富士山に「初雪」のマークがついていますが、実は今でも「初雪」ブランドは健在で、最新型の機種が発売される中、令和時代にも同じような手回し式のものがありました。
ハンドルの位置以外、基本的な形は変わっていませんね。
(参考画像)出典:株式会社中部コーポレーションHPより「初雪ブロックアイススライサー」
④
上記③のような「かき氷機」ができる以前に主に使われていたのは「台鉋(かんな)」と呼ばれるものです。(横の長さは約33cm)
大工道具の鉋(かんな)の刃が上向きについているような形態で、氷を前後に動かして削ります。
まさに手動ですね。
3. 冷やしあめってご存じですか?
関西以外の方はおそらくご存じないかもしれない、「冷やしあめ」。
どういうものかというと、水あめをお湯で溶いて、生姜(しょうが)のしぼり汁を加えたものが「あめ湯」で、これを冷やしたものが「冷やしあめ」。
ほんのりした甘みと生姜の香りが何ともいえない、琥珀(こはく)色の飲み物です。
関西では、以前から夏に飲まれていたようですが、さすがに最近では店頭で売っているのをほぼ見かけなくなりました。
⑤
昭和初期には店先にこんな容器が置かれ、1杯 1銭や2銭で売られていたようです。
手前にあるのはガラス製の値札です。
現在ではこんな形でも販売されています。
(参考画像)出典:ハタ鉱泉株式会社HPより
さて、今回はここまで。
昔から暑い夏を乗り切る為、さまざまな冷たいおやつが受け継がれてきたことがわかります。
まだまだ暑さは厳しいですが、冷たいものを食べ過ぎてお腹を冷やさないよう、お過ごしください。
※前回の記事はこちら
お菓子な博物館 第18回 ~夏は涼しく レトロなうちわ広告 編~
<今回の展示品>
① ポスター 「衛生ところてんみつ豆」/海草天草問屋 合資会社西宮商店 昭和初期 約53×25cm
② ところてん突き/昭和時代 約7.5×7×45cm
③ かき氷機「初雪」/昭和中期~後期 約25×17× 高さ30cm(本体)
④ 氷削用 台鉋(かんな)/昭和時代 約13×33×18cm
⑤ ひやしあめ用大型ガラス容器/昭和初期頃 約26cm× 高さ25cm
ガラス製メニュー「ひやしあめ二銭」/昭和初期頃 約19×8cm
ガラス製メニュー「一銭」/昭和初期頃 約17×8cm
ガラス製カップ 約6× 高さ14cm
所蔵及び掲載画像撮影:株式会社山星屋
yoshi
お菓子と歴史が大好きな、「お菓子な博物館」の専属学芸員。ここでしか見られない、貴重なコレクションを独自目線で皆様にご紹介します。好きなお菓子はロングセラーの定番商品。でも新製品も気になる(笑)