2021.06.27
お菓子な博物館 第18回 ~夏は涼しく レトロなうちわ広告 編~
目次
出典:写真AC
暑くなってきましたね。ハンディファンを手放せない方も多いのではないでしょうか。
そんな中、今でも夏場に実用性の高い広告ツールとして見かけるうちわ。ご家庭にも何本かありますよね。
そこで、少しでも涼しい気分になっていただけるように、今回はレトロ感満載なお菓子のうちわ広告をご紹介したいと思います。
1. うちわと広告
「うちわ」というと、夏祭りやアイドルの応援グッズなどが思い浮かびますね。
その語源についても諸説ありますが、虫などを羽で打ち払うことから「打つ羽(は)」⇒「うちわ」なのだとか。その昔は儀礼に用いられていましたが、江戸時代には庶民に広がり、日常生活の道具として使われていたようです。
そして、明治時代以降、広告ツールとして活用されるようになったのだそうです。
①
まずは、うちわを持った女性を描いたうちわです。(昭和初期頃のものでしょうか)
右のうちわには小さな黄色い丸が飛んでいますが、おそらく蛍。どちらも月夜に同じ方向を向いて立っており、なんとなく構図が似ていますね。
現在のようなプラスチック製ではなく、竹と和紙で作られたうちわはそれだけで風情が感じられます。
①-2
裏側はそれぞれこんな感じです。どちらも菓子店名が入っており、この「お菓子な博物館」でも以前紹介した、ちらし広告「引札」(ひきふだ)のうちわ版という印象です。
⇒引札について知りたい方はこちら
②
上記①と同じく、うちわを持った浴衣姿の女性を描いたうちわです。こちらも裏面に菓子店名が入っています。
色合いも涼しげで、風鈴の音が聞こえてきそうです。(チリン♪)
2. お菓子のうちわ広告
続いては、お菓子が描かれたうちわ広告をご紹介したいと思います。
③
和洋御菓子司の様子を描いた、昭和初期頃のうちわです。裏面に「森永ベルトライン」とあり、昭和3年(1928)に始まった森永製菓の製品を取り扱うお店「森永ベルトラインストア」に加入していたと思われます。
③-2
拡大すると、後ろの棚には、ビスケット・カルケット・コーヒーなどが並んでいます。
この場合の『勉強する店』の“勉強する”とは、“値引きをします”の意味合いです。
④
変わってこちらは昭和中期頃の菓子店での親子を描いたうちわです。
当時のファッションも素敵ですが、お菓子屋さんの様子もよくわかる貴重な図柄です。
④-2
陳列ケースに入った菓子が並んでいますが、よく見ると、こんなところにビスコの缶を発見‼。その下はカステラのようです。
他にもビスケットやチョコレート、ミルクキャンディなどもあり、上記③の時代に比べると格段に進化しています。
謎の文字「まんすて」が気になりますが、実はお店の名前が「萬捨(まんすて)商店」なのです。そして、現在でも、滋賀県で営業されているようです。
⑤
④と同じ商店のうちわで、和洋御菓子屋の店先の様子です。こちらも粟おこしにビスケットやドロップ缶などが並んでいます。
そして、男の子がうれしそうに持っているお土産。中身が気になりますね。
⑥
最後にご紹介するのは、うちわ絵の見本です。
昭和レトロを感じさせる雰囲気がたまりませんが、おそらく、昭和時代中期の女の子にとってはお人形も、たくさんのお菓子もまさに憧れだったのでしょうね。この絵がうちわになった姿も見てみたいところです。
さて、今回はここまで。
お菓子に関係するうちわをご覧いただきましたが、少しでも涼しい気分になっていただけましたでしょうか。
(それよりもお菓子が食べたくなってきたという声も聞こえてきそうです。)
まだまだ暑さは続きますが、気分転換に、うちわ片手に「のんびりおやつタイム」もいいかもしれませんね。
※前回の記事はこちら
お菓子な博物館 第17回 ~6月1日はチューインガムの日 昭和のレトロなガム達 編~
<今回の展示品>
① うちわ広告 御菓子まんぢゅう婚礼仏台引菓子並に砂糖類/菓子政商店
うちわ広告 飴菓子製造 仏事婚礼用押物 砂糖掛ものるい/飴伊商店
② うちわ広告 お菓子 お砂糖/菓子善支店
③ うちわ広告 菓子製造 卸小売 台引調進 薪炭/森永ベルトライン 外山包次商店
④ うちわ広告 凍氷卸 和洋菓子まんぢう 各種パン製造 慶弔用引菓子調進所/萬捨商店
⑤ うちわ広告 凍氷卸 和洋菓子まんぢう 各種パン製造 慶弔用引菓子調進所/萬捨商店
⑤ うちわ広告 見本 約24×24cm
所蔵及び掲載画像撮影:株式会社山星屋
yoshi
お菓子と歴史が大好きな、「お菓子な博物館」の専属学芸員。ここでしか見られない、貴重なコレクションを独自目線で皆様にご紹介します。好きなお菓子はロングセラーの定番商品。でも新製品も気になる(笑)