2026.02.16
バレンタインが終わったら、イチゴの番! ―デパ地下「菓遊庵」で見つけた地方の美味しいイチゴ菓子3選―〜お菓子パッケージの世界 第40回~
バレンタインが終わると、デパ地下の空気は少しずつ色を変えていきます。チョコレート一色だった売り場に、淡いピンクや赤が目立ち始める季節です。私は仕事帰りや取材の合間に、銀座三越の地下にある全国の銘菓コーナー「菓遊庵」を定期的に訪れるのが習慣になっています。北は北海道から南は沖縄まで、全国各地の名店の人気お菓子が揃うこのコーナーは、今やデパ地下には欠かせない存在で、いつも多くの人々で賑わっています。季節ごとに品揃えが少しずつ変わり、そのたびに新しい発見があるのも魅力です。

菓遊庵は、単なるお土産菓子の集合場所ではありません。それぞれの土地の風土や歴史、作り手の思いが詰まったお菓子が、一堂に並んでいます。旅行に行かなくても、日本各地の味を少しずつ楽しめるのが、この場所の醍醐味です。今回もそんな菓遊庵の棚を眺めていたところ、目に留まったのがイチゴを使ったお菓子でした。春の訪れを感じさせる三つのお菓子を、南から北へ、長崎、愛媛、長野の順にご紹介します。
1.長崎・菓秀苑 森長「カステラとあまおう苺」3枚入り594円(税込)
最初に手に取ったのは、長崎の菓秀苑 森長の「カステラとあまおう苺」です。森長は長崎を代表する菓子メーカーの一つで、カステラをはじめとした焼き菓子に定評があります。長崎はもともとカステラ文化が根付いた土地であり、森長はその伝統を大切にしながらも、時代に合わせた味づくりを続けてきました。老舗らしい安定感と、どこか新しさも感じさせる菓子づくりが魅力です。
このお菓子は、しっとりとしたカステラと、福岡県産のあまおう苺のジャムを組み合わせたもの。開封するとき、甘酸っぱいあまおう苺の香りがふわっと漂います。
実際に口に運ぶと、まずカステラのやさしい甘さが広がり、そのあとにイチゴのほどよい酸味が重なってきます。甘さ一辺倒ではなく、きちんと“イチゴらしさ”が感じられるところがいい。コーヒーにも緑茶にも合いそうな、懐の深い味わいです。
キューブ状のピンクの紙箱には手書き風のイチゴとカステラのイラストが描かれていて、ホッと和む雰囲気。可愛らしいデザインでプチギフトとしてもおすすめです。
2.愛媛・母恵夢「ベビー母恵夢 あまおう苺」6個入り800円(税込)
続いて、愛媛の「ベビー母恵夢(ポエム) あまおう苺」。母恵夢は、昭和31年に松山市の大街道商店街で創業した菓子メーカーです。地元の人々に寄り添いながら、日常のおやつとして親しまれてきた歴史があり、その名前の通り「母のやさしさ」を感じさせるお菓子作りが特徴です。派手さはないけれど、誰にでも愛される味を大切にしてきた会社だという印象があります。
ベビー母恵夢は、ふんわりとした生地にクリームや餡を包んだ焼き菓子で、愛媛を代表するお菓子の一つといってもよい存在です。今回のあまおう苺味は、国産のあまおう苺のピューレを加えた餡を、しっとりとした生地で包んでいます。
ひと口かじると、生地がやわらかく、ほんのり甘いイチゴの香りが広がります。甘さは強すぎず、子どもから大人まで食べやすいバランス。6個入りというのも、家族で分けたり、職場へのちょっとした差し入れにちょうどよいサイズです。
パッケージには大きなイチゴが描かれていますが、どこか素朴で親しみやすいタッチ。いかにも“映える”という感じではありませんが、見るたびに安心するような、やさしい可愛らしさがあります。
3.長野・太平堂「ストロベリーケーキ」一個368円税込
最後に選んだのは、長野の太平堂の「ストロベリーケーキ」です。太平堂は長野を拠点にする菓子メーカーで、洋菓子と和菓子の要素をほどよく取り入れた菓子づくりで知られています。信州の豊かな自然や良質な水を活かしながら、誰にでも食べやすい味を大切にしてきた会社です。
このケーキは、レモンを使用したスポンジに、いちご色のドライストロベリーチョコをコーティングしたもの。
いただくと、まずレモンの爽やかな香りがふわっと立ち上り、その後にイチゴのやさしい甘酸っぱさが広がります。そしてスポンジの所々にラムレーズンが。全体的に軽めの仕上がりで、重たくならないところが好印象。紅茶はもちろん、ブラックコーヒーとも相性がよさそうです。自分のおやつとして楽しむのに、バラ売りなのも嬉しいポイントです。
パッケージには赤いチェックと蔓状のイチゴが描かれていて。親しみやすく、思わず手に取りたくなる可愛らしさ。長野のやさしい風景を連想させるような、春らしい色合いです。
こうして三つのお菓子を並べてみると、同じ「イチゴ」をテーマにしていても、それぞれの土地らしさがはっきりと表れているのがよくわかります。長崎のカステラはどこか落ち着いた上品さがあり、愛媛の母恵夢は家庭的であたたかく、長野のストロベリーケーキは爽やかで軽やか。
菓遊庵という場所は、そんな違いを自然に感じさせてくれる場所でもあります。バレンタインが終わると、デパ地下は春色に塗り替えられていきます。赤く小さなイチゴに込められた各地の個性を味わいに、また近いうちに足を運んでみようと思います。
🌸堤信子さんのInstagramはこちら🌸
🌸お菓子と、わたしInstagramはこちら🌸
堤信子さんプロフィール

福岡県生まれ。県立修猷館高校から青山学院大学経済学部を卒業後、FBSにアナウンサーとして入社、その後フリーに。日本テレビ「あさ天ファイブ」「ズームインスーパー」、TBS「はなまるマーケット」のレギュラーを長年つとめ、現在、フリーアナウンサー、大学講師、コラムニストとして活躍中。また、文具やお菓子箱のコレクターとして、NHK Eテレ「デザインプラス」、NHKワールド「カワイイインターナショナル」、TBS「マツコの知らない世界」「サタデープラス」などにご出演。
▶連載コラム
講談社ファッションウェブマガ「mi-mollet」 文具と雑貨連載ブログ「今日の愛おしいもの~文具と雑貨~」、ライフスタイル連載「お菓子箱ラバー堤信子の愛おしいおやつ、時々珈琲」▶エッセイ
インスタグラム「イービーエムさやん」 ミニエッセイ連載「あなたのここちよさを作る習慣」▶書籍
・「TOKYO文具雑貨散歩~旅鞄いっぱいの東京」辰巳出版(新刊)
・「堤信子のつつみ紙コレクション」玄光社
・「旅鞄いっぱいの京都ふたたび」実業之日本社
・「旅鞄いっぱいのパリふたたび」実業之日本社
・「旅鞄いっぱいの京都・奈良」エイ出版社
・「旅鞄いっぱいのパリ・ミラノ」本の泉社
・「100人中99人に好かれるありがとう上手の習慣」ディスカヴァー21社
・「ありがとうの届け方」主婦と生活社
・「堤信子の暮らしがはずむちょっといい話」実業之日本社
▶「お菓子パッケージの世界」連載に向けて、読者の皆様へメッセージ
癒されるお菓子、幸せを運んでくれるお菓子を、みなさんとともに五感で楽しみ、その小さな喜びを文字にしていけたらと思っています。 よろしくお願いいたします。堤 信子
フリーアナウンサーでお菓子箱コレクターの堤信子さんが、癒されるお菓子、幸せを運んでくれるお菓子を、五感で楽しむ連載企画「堤信子さんと巡るお菓子パッケージの世界」。好きなお菓子は「多すぎて書ききれません!」


