2022.12.22
お菓子な博物館 第32回 ~ 卯年 うさぎが描かれた引札 編 ~
貴重なコレクションを皆様にご紹介する 「お菓子な博物館」へようこそ
目次
いろいろあった2022年も残りわずかとなりました。
2023年の干支は卯、ということで、干支シリーズ2回目はうさぎが描かれた引札をご紹介したいと思います。
出典:写真AC
1.引札(ひきふだ)とは
引札(ひきふだ)とは何かというと、江戸時代後期~大正時代頃にみられた「ちらし」のことで、特に明治30年代以降は印刷技術の向上もあり、各商店が好みの図柄を選び、店名等を入れて印刷したものを顧客に配っていたようです。
暦入りのものや、年末に配られることも多かったので、現代の企業名入のカレンダーのようなものといえるでしょうか。
図柄には当時の世相がわかるものも多く、この「お菓子な博物館」にもこれまでに何度か登場しています。
2.うさぎが描かれた引札
①
「菓子砂糖掛物類 餅まんじゅう」を扱う商店の引札です。
大きな(大き過ぎる?)鏡餅を持つ母娘。その後ろの屏風には餅をつくうさぎが描かれています。
でも、気になるのは鏡餅に下げられた「大金もち」の文字。お正月らしく、大変縁起の良い図柄になっています。
②
「種菓子みじん粉 あらこ種志んびき製造販売店」の引札です。
みじん粉・あら粉・しんびき粉など、菓子を作る原料を取り扱っていたお店のようです。
鏡餅を持つ女性の背景に上の①と同じように餅をつくうさぎが描かれています。
ここで、①と②のうさぎを比べてみましょう。
どちらも満月を背景に擬人化されたうさぎが餅をついており、明治時代も「月に、うさぎの餅つき」はよく知られていたようです。
同じ餅つきでも、絵師のタッチでかなり印象が変わりますね。
③
こちらは「精良牛乳搾取販売並びに純粋バター製造」の搾乳場の引札で、行司役の金太郎の前で相撲を取るうさぎが描かれています。
マワシ姿のうさぎがユーモラスですね。
④
最後に番外編。フランスのアンティークのチョコレート型です。
型は折り畳み式になっており、写真は開いた状態ですが、重ね合わせて、足元からチョコレートを流し入れると、6体のうさぎの出来上がりです。(高さは8cm程度)
イースターなどでうさぎのチョコレートは見かけますが、こちらはちょっと変わった洋装のうさぎです。
何を持っているのか判別が難しいところですが、テニスラケットのようなものを抱えているようにも見えますね。
さて、今回はここまで。
うさぎが描かれた引札はそれほど多くありませんが、擬人化されているところからも、馴染みがある存在だったのかもしれませんね。
2023年、うさぎ年が皆様にとって良い年でありますように。
※前回の記事はこちら
お菓子な博物館 第31回 ~ 1990年代のお菓子 <チョコレート>後編 ~
◎干支シリーズの第1回、2021年の丑年にちなんだ牛の引札はこちら。
<今回の展示品>
① 引札 菓子砂糖掛物類餅まんぢう 中川商店/明治時代後期 約26×38cm
② 引札 種菓子みじん粉あらこ種志んびき製造販売店 宮本忠治郎/明治時代後期 約26×37cm
③ 引札 精良牛乳搾取販売并二純粋バター製造 森川搾乳場/明治時代後期 約26×38cm
④ フランス チョコレート金型 うさぎ/年代不明 約9×23×3cm
所蔵及び掲載画像撮影:株式会社山星屋
yoshi
お菓子と歴史が大好きな、「お菓子な博物館」の専属学芸員。ここでしか見られない、貴重なコレクションを独自目線で皆様にご紹介します。好きなお菓子はロングセラーの定番商品。でも新製品も気になる(笑)