2020.08.25
お菓子な博物館 第8回 ~昭和初期版 全国お菓子で旅巡り 前編~
目次
今回は昭和初期に収集された、全国のお土産品から当時の名物菓子をご紹介。
たくさんあるので、前後編2回に分けてお送りします。前編は東日本です。
1. 名物票~お土産コレクション~
夏から秋にかけて、本来なら絶好の旅行シーズン。
例え旅行に行けなくても、各地のお土産品は見ているだけでわくわくします。
ところで、旅行のお土産(いただきものも含む)のラベルや包み紙ってどうしていますか。今の時代、大事にとってあるという方は少ないのではないでしょうか。
ここにご紹介する「名物票」は、昭和初期のお土産の商標(ラベル)等が、各地域別に編集されたコレクションです。北は樺太(現:サハリン)から、南は沖縄、さらに朝鮮半島まで8冊にまとめられています。
①「名物票」全8冊
奥左から、「東海道篇」「四国篇」「樺太・朝鮮・琉球・九州・東京方面」「北信越及其他篇」「山陽道篇」
手前左から、「京都篇」「奈良・和歌山・三重」「摂河泉篇」 に編集されています。
大きさは1冊が21×17cm。
近畿圏のものが多いことから、集められた方はおそらく京都か大阪辺りにお住まいだったのかも、と想像してしまいます。装丁もそろっており、レイアウトにもこだわりがみられるので、かなり几帳面な方かもしれません。
今のように交通機関が発達していない昭和初期、気軽に旅行にいける時代ではないので、商標(ラベル)等を集めて楽しんでいたのではないでしょうか。
収集されたのは約90年近く前ですので、今では存在しない菓子もありますが、中には営業を続けている老舗も登場します。
それでは、少しづつご紹介 していきます。 昭和初期へタイムトラベル 気分でどうぞ。
2. 東海道篇
②「東海道篇」表紙
各表紙とも、このような装丁になっています。「名物票」の文字自体がおしゃれですね。(もちろん手書きです)
③
白糸の滝(静岡県富士宮市)の名産「白糸羊羹」。また、「富士五湖せんべい」には富士五湖巡り案内のしおりも付いています。
④
岡崎(愛知県岡崎市)の名産「五万石」「キサラギ」 どちらも岡崎城が描かれています。
⑤
近江(滋賀県)の「名所糖」「弁慶力餅」「五色豆」等。やはり、琵琶湖が登場します。
3. 北信越、東京他
⑥
福井県の羽二重餅は今でも有名ですね。
⑦
甲斐(山梨県)名産はやはり葡萄(ぶどう)。枯露柿(ころがき)と は干し柿のことです。
⑧
東京・浅草、雷おこしが有名ですが、これは「御家宝」。 浅草寺の五重塔は現在とは違い、本堂の東側に建っていました。明治 末に国宝に指定され、当時の東京のランドマーク的存在だったそうです。
⑨
東京・亀戸天神の千歳飴です 。
⑩
最後に気になる、樺太のお土産。「フレップ餅」に「フレップ羊羹」、フレップとは コケモモのことで、ジャムなどにも利用されるそうです。一体 、どんなお味だったのでしょうか。
そして、後編へ続きます。お楽しみに。
※前回の記事はこちら⇩
> お菓子な博物館 第7回 ~炭酸はじける‼ サイダー&ラムネ 編~
※次回の記事(後編・西日本)はこちら⇩
> お菓子な博物館 第9回 ~昭和初期版 全国お菓子で旅巡り 後編~
<今回の展示品>
① 「名物票」8冊 「東海道篇」「四国篇」「樺太・朝鮮・琉球・九州・東京方面」「北信越及其他篇」「山陽道篇」「京都篇」「奈良・和歌山・三重」「摂河泉篇」/昭和初期 21×17cm
② 「東海道篇」表紙
③ 「東海道篇」より 「白糸羊羹」「富士五湖せんべい」
④ 「東海道篇」より 「五万石」「キサラギ」
⑤ 「東海道篇」より 「名所糖」「弁慶力餅」「五色豆」
⑥ 「北信越及其他篇」より 「豆らくがん」「羽二重餅」「豆落雁」
⑦ 「北信越及其他篇」より 「煉葡萄」「枯露柿」、「葡萄の雫」
⑧ 「樺太・朝鮮・琉球・九州・東京方面」より 「御家宝」「甘納豆」「榮太樓」
⑨ 「樺太・朝鮮・琉球・九州・東京方面」より 「翁堂本舗」「千歳飴」
⑩ 「樺太・朝鮮・琉球・九州・東京方面」より 「フレップ羊羹」「フレップ餅」
所蔵:株式会社山星屋
yoshi
お菓子と歴史が大好きな、「お菓子な博物館」の専属学芸員。ここでしか見られない、貴重なコレクションを独自目線で皆様にご紹介します。好きなお菓子はロングセラーの定番商品。でも新製品も気になる(笑)