2020.07.29

お菓子な博物館 第7回 ~炭酸はじける‼ サイダー&ラムネ 編~


目次

 

今回はお菓子にもあう、夏にぴったりの飲み物、サイダーとラムネを取り上げます。

 

1. サイダー、ラムネとは 

サイダーとは、日本独特の炭酸飲料で、炭酸水に甘味や香りをつけたもの。

明治時代初期に、横浜で炭酸水にリンゴとパイナップルの香料で風味をつけた「シャンペン・サイダー」が販売され、以後同種の飲料の通称となったそうです。英語のサイダー(cider)は、リンゴ酒(シードル)やリンゴジュースを意味するので、日本のサイダーとは別物です。

また、サイダーとほぼ同成分のラムネは、独特の玉入り瓶につめられた飲料で、レモン果汁をいれた飲料の「レモネード」が訛(なま)ってできたものといわれています。

ちなみにサイダーと混同しがちな、「ソーダ(ソーダ水)」は炭酸水全般をさすので、サイダーもラムネも実はソーダの一種ということになります。(ややこしいですね。)

 

ラムネ瓶いろいろ

①ラムネ瓶いろいろ

 

昭和初期から中期頃の様々なラムネ瓶。高さは15~19cm。左端の木製品は、栓になっている玉を落とす為の道具です。

 

2. 明治時代のきゅうり瓶 

日本に初めて炭酸飲料が伝えたのは1853年、ペリー提督が艦隊を率いて浦賀に来航したとき、飲料水の一部として艦に「炭酸レモネード」を積んでおり、幕府の役人にこれを飲ませたのが、“炭酸飲料1号”だといわれています。

 

サイダー・ラムネといった清涼飲料水の歴史について詳しく知りたい方はこちら。↓

出典:全国清涼飲料連合会HP

 

きゅうり型ガラス瓶

 ②イギリス きゅうり型炭酸水瓶 「COVENTRY」

何やら不思議な形のこのガラス瓶、イギリス製の炭酸飲料の瓶(大きさは約23cm)です。明治初期に日本に輸入されていたのもこのような瓶で、その色と形から“きゅうり瓶”といわれています。

 

 

版画 東京名所三十六戯撰 数寄屋河岸  

③版画 「東京名所三十六戯撰 数寄屋河岸」

こちらは1872年(明治5年)発行の版画「東京名所三十六戯撰 数寄屋河岸(すきやがし)」、作者は 昇斎一景(しょうさい いっけい)です。

中央の男性が手に持っているのがきゅうり瓶で、コルク栓を抜いてびっくりする様子が描かれています。当時の炭酸水の勢いも感じられます。

しかし、1887年(明治20年)頃に玉入のラムネ瓶が輸入されてからは、きゅうり瓶は使われなくなっていったそうです。

 

3. サイダーいろいろ 

1884年(明治17年)に「平野水」(後の三ツ矢サイダー)が発売。

また、1909年(明治42年)には帝国礦泉(現在のアサヒ飲料)から「三ツ矢シャンペンサイダー」が発売されています。昭和初期から中期には様々なサイダーが販売されており、その人気ぶりが伺えます。

中には、サイダー瓶のラベルをはがしてコレクションする方もいたようです。

サイダーラベル

④サイダー類商標貼込帳

昭和初期のサイダーのラベル(商標)を集めたものから、帝国廣泉時代の三ツ矢シャンペンサイダーと布引印サイダーのラベル。

 

 

サイダーラベル 三ツヱビサイダー他

⑤サイダー類商標貼込帳(兵庫県清涼飲料関係)

 こちらは昭和30年頃に兵庫県で販売されていたサイダーのラベル(商標)コレクションの一部。

三ツ矢にあやかったのか、三鶴シャンペンサイダーや三ツエビサイダーなど多種多様なサイダーが販売されていたことがわかります。どことなく、似たものが多いですね。

 

4. 懐中(かいちゅう)ラムネ 

懐中ラムネ 固形十八番

⑥すだれ状広告 「夏期進物好適品 懐中ラムネ 固形十八番」

最後にご紹介するのは、大正から昭和初期頃の 固形十八番 懐中ラムネの広告です。

何と、水に溶かすとラムネになるという懐中ラムネ。明治時代に神戸・居留地の十八番ラムネが有名だったことから、十八番=ラムネなのだとか。“夏期進物最適品”とアピールするだけあって、この広告も夏らしく、すだれ状になっています。

固形のラムネといえば、今ではラムネ菓子のことですね。明治時代には、ラムネは高価な飲料だったことから、子ども向けに作られたのがラムネ菓子ともいわれています。

最近はガラス瓶入りのサイダーやラムネは見かけることが少なくなりましたが、地域限定の地サイダーや地ラムネに受け継がれています。やはり、暑い夏にはサイダーやラムネが似合いますね。(もちろん、その隣にはお菓子もお忘れなく。)

 

※前回の記事はこちら ↓

>お菓子な博物館 第6回 ~お菓子な玩具(おもちゃ)~編

 

<今回の展示品>

①ラムネ瓶 6点 / 昭和初期から中期頃  高さは15~19cm

②イギリス きゅうり型炭酸水瓶 「COVENTRY」/ W.LANT&Co. 1800年代後半頃 約8×23cm

③版画 「東京名所三十六戯撰 数寄屋河岸」/昇斎一景  明治5年(1872)  約40×29cm

④サイダー類商標貼込帳  「布引印サイダー」 「三ツ矢シャンペンサイダー」/昭和初期   冊子は18×12cm

⑤サイダー類商標貼込帳(兵庫県清涼飲料関係)/昭和30年頃  冊子はA4程度

⑥すだれ状広告 「夏期進物好適品 懐中ラムネ 固形十八番」 / 大正から昭和初期頃  約77×18.5cm

 

所蔵:株式会社山星屋

 

この記事を書いたライター

yoshi

お菓子と歴史が大好きな、「お菓子な博物館」の専属学芸員。ここでしか見られない、貴重なコレクションを独自目線で皆様にご紹介します。好きなお菓子はロングセラーの定番商品。でも新製品も気になる(笑)

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