2021.02.12

お菓子な博物館 第14回 ~2月28日はビスケットの日 編~


 

目次

 

2月28日は「ビスケットの日」、ということをご存じでしょうか。おそらく知らない方も多いと思いますので、今回は「ビスケットの日」にちなみ、日本のビスケットとその歴史について、少しですがご紹介します。

 

1.ビスケットの日とは

全国ビスケット協会によると、江戸末期に水戸藩士の蘭医、柴田方庵(しばたほうあん)という人物が、長崎留学中にオランダ人から学んだビスケットの作り方を手紙にし、 安政2年(1855)2月28日に、水戸藩に宛てて送った史実があり、これが日本でビスケットが作られたことが明確にわかる最も古い記録とされています。 また、ビスケットの語源はラテン語で「2度焼かれたもの」の意味であり、この語源と柴田方庵の史実を考えあわせ、昭和55年(1980)に、毎年2月28日が「ビスケットの日」とされました。

 

出典:社団法人 全国ビスケット協会HPより

 

2.日本のビスケットいろいろ

それでは、日本のビスケットの歴史を語るにはこれ‼、というものをご紹介していきます。

 

(1)風月堂の「乾蒸餅」(ビスケット)

①(右は一部拡大)

明治時代中期の東京名物を描いた版画『東京自慢名物絵』(明治29年発行)の1枚で、左上に日本橋・若松町にあった風月堂の店舗と、「乾蒸餅(ビスケット)」の文字が見られます。
米津松造は、明治8年(1875)に国産初のビスケットの製造販売に成功するなど、洋菓子界の草分け的存在であり、明治末には多くの支店を持つまでになりました。明治10年(1877)の内国勧業博覧会にて“乾蒸餅”という日本語訳が初めて使われ、この時、風月堂米津松造の「乾蒸餅(ビスケット)」が褒賞を受賞しました。

 

当時販売されていた菓子木箱などに貼られていたラベル(商標)です。「西洋風菓子 乾蒸餅 製造所本舗」とあります。

 

参考:http://www.tokyo-fugetsudo.co.jp/gaiyou/ENKAKU.html

 

(2)森永製菓 マリービスケット

大正12年(1923)発売の超ロングセラー商品、マリービスケット。発売当初は、単品ではなく、詰め合わせのビスケットの中の1つだったそうです。

 

おそらく大正時代末頃の森永ビスケットのポスター(下部分は残念ながら欠落)です。缶には様々なビスケットが入っていますが、女の子が手にしているのは、まさに「マリービスケット」です。(よくわかるように拡大してみました。)

 

上のポスターの缶とデザインがよく似ていることから、同時代と思われる、ビスケットのブリキ缶に貼られていた紙ラベルです。当時の東京工場の写真も入っています。

 

こちらは昭和初期頃の森永マリービスケット缶です。当時はこのようなブリキ缶で販売されていました。まだまだ高価な進物用という感じです。この後、より簡易なパッケージへと移行し、大衆へと広がっていきます。

 

マリービスケットの歴史はこちら(森永製菓HP) https://www.morinaga.co.jp/biscuit/history/story/ex_marie.php

 

(3)江崎グリコ ビスコ

今でもお馴染みの「ビスコ」。昭和8年(1933)に発売された酵母入りクリームサンドビスケットです。ビスコの名前の由来は「酵母ビスケット」⇒略して「コービス」⇒逆にして「ビスコ」なのだとか。グリコとの語呂もよいからというのもあります。
※現在のビスコは、「酵母」ではなく「乳酸菌」が入っているそうです。

 

ビスコの発売当時のちらし(部分)です。お菓子であることから、「薬を服むやうな気持でなく、知らず識らず容易く(しらずしらずたやすく)、然も完全に栄養素を摂り入れる事になります。」とあります。栄養がまだまだ足りなかった時代、“出た!”の文字にも力強さを感じます。

 

こちらは発売初期のビスコ販売用の紙製のPOP兼陳列台です。厚紙で作られている為、このように折って立たせると、立体的になり、箱部分の空間にビスコを置くことができます。
そして、このビスコを食べる男の子、気になりますよね。彼はなんと昭和初期のビスコ坊やなのです。現在は平成17年(2005)登場の5代目、時代とともにパッケージとビスコ坊やも変化しています。

 


(参考画像)現在のビスコ。真っ赤なパッケージにビスコ坊やもいます。

出典:江崎グリコHPより

歴代のビスコ坊やも登場する、ビスコの歴史はこちら(江崎グリコHP)
https://cp.glico.com/bisco/about/history.html

 

 

今回はビスケットの中でも特に歴史の古いものをご紹介しました。
発売から90年以上経っているのに、菓子そのものの見た目は発売当時とほぼ変わっていない、「マリービスケット」と「ビスコ」に驚きです。子どもの頃からずっと変わらないお菓子があるのはうれしいですね。
ビスケット以外にもロングセラー商品はたくさんありますので、別の機会にご紹介していきたいと思います。

 

 

※前回の記事はこちら⇩

> お菓子な博物館 第13回 ~丑年 牛の描かれた引札 後編~

 

 

<今回の展示品>

① 版画「東京自慢名物會 橘家圓喬 ビラ辰」「乾蒸餅歐洲菓子製造本鋪 風月堂 米津松造」他  豊原国周等
  38cm× 26cm/明治29年

② ラベル(商標)「大日本東京府下 西洋風菓子 乾蒸餅 製造所本舗 両国若松町 風月堂 米津松造 京橋南鍋町
  同分店 米津恒二郎」/明治時代   8cm×12.5cm

③ ポスター「森永ビスケット」/森永製菓 大正時代末頃 約64cm×25cm 下部欠落

④ 紙ラベル「森永ビスケット」/森永製菓 大正時代末頃  (下のラベルサイズ)約10cm×19cm

⑤ マリービスケット缶/森永製菓 昭和初期頃 7.5cm×23cm

⑥ ちらし広告「出た!酵母菓子ビスコ」/江崎(現:江崎グリコ)  昭和8年頃 <部分>

⑦ ビスコ陳列用台/グリコ(現:江崎グリコ) 昭和10年代頃  39cm×12cm(平面時のサイズ)

 

 

所蔵:株式会社山星屋

この記事を書いたライター

yoshi

お菓子と歴史が大好きな、「お菓子な博物館」の専属学芸員。ここでしか見られない、貴重なコレクションを独自目線で皆様にご紹介します。好きなお菓子はロングセラーの定番商品。でも新製品も気になる(笑)

ライターのプロフィールを見る

あなたにおすすめのお菓子記事