2020.05.25
お菓子な博物館 第5回 ~アイスクリーム製造器~編
目次
アイスクリームが食べたくなる季節がやってきました。そこで、今回は昭和初期頃に使われたアイスクリームを作る道具をご紹介します。
1. あいすくりんの誕生
日本人とアイスクリームの出会いは江戸末期のこと。
幕府が派遣した使節団が訪問先のアメリカで食べたのが最初といわれています。
そして明治2年(1869)には、横浜の町田房蔵が馬車道通りで日本最初のアイスクリーム「あいすくりん」の製造販売を始めました。
アイスクリームの歴史について詳しく知りたい方はこちら。↓
2. アイスクリームの製造器
海外ではいち早くアイスクリームの製造器が作られており、中でもアメリカでは1846年に手回し式の製造器が発明されました。
基本的な形としては、樽の中に氷と塩を入れ、材料の入った容器を冷やしながら回転させることで、アイスクリームができあがりました。
①アメリカ アイスクリーム製造器
アンティークなアメリカ製のアイスクリーム製造器です。
サイズは樽の直径が約14cmと小型ですが、手回し式になっており、回転させる労力が軽減されるようになっています。
②日本 木製アイスクリーム製造器
所変わって、日本の木製のアイスクリーム製造器です。
直径18cm程度の樽の中に氷と塩を入れ、持ち手のついた茶筒状のもので材料を攪拌して、作られていました。
こちらは手で容器を回転させなければならないため、作るのは大変だったのではないでしょうか。
③ボントン アイスクリーム製造機
昭和初期に日本で流通したと思われる「ボントン アイスクリーム製造機」です。形も少し変わっています。
④ボントンアイスクリーム製造機 説明書
説明書も残っており、“五秒でできる”という、超高速度アイスクリーム製造機として、画期的な商品だったようです。説明書をみると、これまでの製造器と違って、中央に氷と塩を入れて、周囲の材料を冷やすというものでした。
⑤「和洋菓子の作方」より抜粋
昭和9年に発行された主婦の友の付録「-おやつ向きの-和洋菓子の作方」 に掲載されている、アイスクリームの作り方にも ボントン アイスクリーム製造機が“便利な器械”として登場します。
とはいえ、“器械なしで作る方法”として、やはり桶と茶筒が紹介されていますので、こちらが一般的な作り方だったのでしょう。
今のような冷凍庫もない時代、アイスクリームは気軽に食べる訳にはいかなかったようです。
それだけにあこがれも強かったのではないでしょうか。
※前回の記事はこちら ↓
<今回の展示品>
① アメリカ製アイスクリーム製造器「GREENLAND PEERLESS FREEZER」 直径14cm×高さ20cm
② 木製アイスクリーム製造器 直径18cm /昭和初期頃
③ ボントン アイスクリーム製造機/昭和初期
「ボントン アイスクリーム機」説明書/阪急百貨店日用品部 昭和初期 13.5×19.5cm
④ 図書「-おやつ向きの-和洋菓子の作方」 主婦の友付録/ 昭和9年発行 より抜粋
所蔵:株式会社山星屋
yoshi
お菓子と歴史が大好きな、「お菓子な博物館」の専属学芸員。ここでしか見られない、貴重なコレクションを独自目線で皆様にご紹介します。好きなお菓子はロングセラーの定番商品。でも新製品も気になる(笑)